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2005/02/22
Vol.78  永住権申請時の会社の給与支払い能力(続編)

数ヶ月程前、永住権申請の移民局段階におけるスポンサー会社の給与支払能力の証明方法についてお話いたしました。この件についてはその後、問い合わせも多く、特に中小企業ではその証明に苦心しています。そこで今回は再度このテーマを取り上げ、前回のおさらいとともに、その他の対策の可能性についていくつか紹介したいと思います。

まず前回のおさらいになりますが、移民局に対してスポンサー会社が給与支払能力を証明する際に使用できる書類は(1)年次会計報告書 (2)確定申告書 (3)監査済みの財務諸表のコピーとなります。またそれら以外に損益計算書や銀口座記録、他の従業員の賃金記録にて証明できる場合もあります。さらに従業員が100名以上の大企業なら代わりに会社の財務責任者からのレターで対応することも可能です。

そして移民局審査官はそれら書類をもとに通常、下記の条件を基準に会社の支払い能力を判断します。

(1) スポンサー会社の粗利益が永住権申請者に対して最低支払われるべき平均賃金を上回る場合

(2) スポンサー会社の現金などの正味流動資産が永住権申請者に対して最低支払われるべき平均賃金を上回る場合

(3) 永住権申請者本人が既に雇われている従業員であれば、申請時の給与支払額が平均賃金以上であることを確実に証明できる書類がある場合(例えば源泉徴収票など)

ただ多くの会社が上記の基準では給与支払能力を証明できないケースが多く、例えば最近のある年のみ突然大きく赤字が発生しているため、その年では給与支払能力がないと判断されてしまうことを懸念する会社もあります。そのような場合、どうすればいいのでしょうか?このような場合、まず会社にNet Positive Assetがあるかどうかを算定することです。これは会社の総資産から負債を差し引くことで算出でき、その差し引き額が永住権申請者本人に支払う最低必要な給与額の平均賃金を上回れば会社の給与支払能力が認められるでしょう。

また(3)に関し、もし現在の給与額が永住権申請に必要な平均賃金を上回っていない場合はどうすべきでしょうか?まず一つの例は現在の給与額を必要な平均賃金額の一部として計算し、資産などの他の要素と組み合わせることで証明を可能とすることができるかもしれません。ただ従業員の多くは現金で給与を受け取っている場合も多々あり、正式な給与明細を証明の一部として使用できていないのが現状です。

その他の方法としては、減価償却(Depreciation)を考慮に入れるということです。つまり実際多くの会社が税金対策として減価償却分を支出として処理しており、その分を実際の支出としては処理しないことを移民局に対し議論すると言うことです。実際私たちの扱ったケースの中には移民局が永住権申請者本人に対する給与の支払能力があることを見出すために年度末の残高現金、課税所得、減価償却を合計して、その合計が必要な平均賃金を上回ったことで認可されたケースもありました。ただその一方でその手段を用いても申請は却下されてしまうケースがあるのも事実です。なぜなら移民局は給与支払能力を証明する根拠として年度末の現金残高による証明と同様、減価償却を基本的には考慮に入れない姿勢をとっているからです。しかしながら減価償却は実際に発生している支出ではないことを考えると通常の支出から控除されるべきものと私は考えます。

同様に年度末の現金残高も一見有効な根拠と考えますが、移民局はそれを根拠の一つとしては認めていません。ただもし年度末に多額の現金残高があれば一つの根拠として移民局に対し議論を試みるのも方法の一つかもしれません。更に銀行から信用貸しを得られればその証明書を、また親会社に資金があれば親会社の年次報告書を提出するなどの方法が考えられるかもしれません。その他、会社の支払能力を説明するため専門の会計士から一筆レターを書いてもらうことも一つの方法でしょう。

昨年の春先以来、永住権の移民局段階における申請において十分な証拠書類なしでは申請は質問状なしで突然却下されている傾向にあり、ますます状況は反移民の方向に進んでいるように思います。さらに一貫性のない移民局による審査も最近不安の種となっています。移民法に関し、今後より明るい話題を紹介できることを心から期待しています。
弁護士 デビッド・シンデル
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