ビザアドバイス
2005/03/20
Vol.79 移民法に関するよくある誤解10例-前編
私たちが受ける様々な質問のうち、同じような誤解をしているケースが多くあります。今回はそれらのうち代表的な10例を取り上げ、Q&A方式で解説したいと思います。なお、今トピックは2回に分けて紹介いたします。今回は前編として10例のうち5例を取り上げます。 1. (質問) 現在私は今年の6月まで有効なF-1ビザスタンプを持っており、学校が発行した有効なI-20をもとに学生としてアメリカに滞在しています。私はそのビザスタンプの有効期限が切れるまでに帰国し、新しいビザスタンプを取得したうえでアメリカへ再入国しなければならないのでしょうか?もしその有効期限が切れた状態でアメリカに滞在し続けると不法滞在になってしまうのでしょうか?
(答え) いいえ
ビザスタンプはアメリカへ入国する際の単なる通行手形のようなもので、アメリカでの滞在期間の決め手となる書類はI-94と呼ばれる通常アメリカへの入国時にパスポートにホッチキスで止められるもので、I-20と合わせて初めて効力を持ちます。あなたの場合、F-1の学生としてアメリカへ入国していますのでI-94には滞在有効期限としてD/Sと記入されます。それはステータスが有効である限り滞在が可能であることを意味します。この場合現在あなたが所持しているI-20に記されている有効期限が正式な滞在有効期限となります。もちろんアメリカに滞在し続けるためにはその学校に通っていることが必須となります。ただしビザスタンプの有効期限の過ぎた今年の6月以降にアメリカを離れると言うことであればアメリカへ同じF-1ビザにて再入国するためには在外アメリカ大使館・領事館にて新しいF-1ビザスタンプを取得しなければなりません。 2. (質問) 私の夫はH-1Bビザを所持しており、私は配偶者として現在H-4ビザにてアメリカに滞在しています。聞くところでは、H-4ビザなど配偶者ビザ保持者に対して就労許可書(Work Permit)が与えられていると聞きました。これは本当ですか?
(答え) いいえ
通常、H-1などの就労ビザ保持者の配偶者が就労許可書を取得することはできません。数年前、移民局は特例としてEビザ及びL-1ビザ保持者の配偶者に対してのみ就労許可書を発行しています。しかしH-4ビザ保持者には就労許可書は与えられません。 3. (質問) 私は数年前アメリカ市民と結婚し永住権を取得しましたが、現在離婚の手続き中です。もし離婚が正式に成立すれば、私の永住権は自動的に剥奪されるのでしょうか?
(答え) いいえ
もしあなたが結婚後2年以内に永住権取得する場合、通常は2年間有効な条件付の永住権が発行され、2年後にこの条件を取り除く手続きをしなければなりません。しかしその2年以内に離婚するということであれば、その条件を取り除く手続きはできますが、その結婚が正当な理由によるものであることを証明すると供に、結婚が続いている状況よりも高いレベルの証明が必要となるでしょう。ただ最初に取得した永住権が10年間有効であり条件付きのものでなければ離婚がその後の永住権維持に影響を及ぼすことはありません。 4.(質問) 私は数年前、雇用ベースの永住権取得のため労働局申請を行いました。最近その労働局審査が無事通過し、労働許可が下りました。私はこの労働許可証をもとに、永住権のスポンサーとなっている会社にて合法的に就労することができますか?
(答え) いいえ
ここでいう労働許可証とは就労許可書(Work Permit)ではなく雇用認定書(Labor Certification)のことを意味します。この労働局への労働許可申請は雇用ベースの永住権申請に必要な第一ステップであり、単にこの雇用認定書だけでは就労は認められません。これは永住権申請の第2ステップである移民局へのI-140申請(移民申
請)、そしてアメリカ国内で身分変更を行うためのI-485申請に移行するための証明にしか過ぎません。ただしI-485申請を行う際、移民局にEAD(Employment Authorization Card)、ここで言ういわゆる就労許可書(Work Permit)を申請することができます。従って例えばH-1Bのようなその他の就労ビザを保持していないと言う
ことであればその会社にて就労することはできません。 5.(質問) 現在私はH-1Bを保持しており、つい最近勤めている会社からレイオフの通告を受けました。聞くところによると退社後60日間は合法的にアメリカに滞在できるらしいのですが本当なのでしょうか?
(答え) いいえ
H-1Bビザ保持者には退社後の滞在に対するグレースピリオド(猶予期間)は存在しません。移民局の見解では失職した時点でステータスがなくなるとしています。私たちはこのような質問に対して、不法滞在とならないようにできるだけ早く米国を離れるか若しくはできるだけ早く他の仕事を見つけるようアドバイスしています。例えばもしあなたが失職後30日以内に仕事を見つけることができたとしましょう。その場合、移民局はその独自の裁量により失職から再就職までの期間を延長期間として認めることもあるかもしれません。ここで覚えておいて欲しいことは、アメリカでの不法滞在が180日未満であれば特に罰則はあないということです。ただその後、在外米国大使館・領事館にてビザ申請をする際に影響が出てくるかもしれません。特に永住の意思があってはならない非移民ビザ申請においてはアメリカ滞在が一時的な就労のためであり任務完了後は自国へ戻ると言う意思を示さなければならない場合は影響がでてくるでしょう。
弁護士 デビッド・シンデル
http://www.swlgpc.com/
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