ビザアドバイス
2006/07/17
Vol.111 PERMの基本入門書
PERMに関してはこれまで何度か記事で紹介してきましたが、その基本的な事項に関し、未だ多くの問い合わせがあります。そこで今回はこれまでの申請方法との違いも含め、再度このPERM申請の基本事項を紹介致します。 PERMとは雇用を基にした永住権申請の第一ステップとして労働局を通して行う申請です。PERMはProgram Electronic Record Managementの略称で昨年3月28日に施行開始されました。
Labor Certification(LC:労働認定書)とは雇用主が必要な求人活動を通して申請したポジションの条件にあてはまる適切なアメリカ人求職者が見つからなかったことを記した書類です。認可されたLCにはオフィサーからの署名と供にスタンプが押され、適切なアメリカ人が見つからず、同様にその認定が雇用されているアメリカ人雇用者の賃金や労働条件に悪影響を及ぼさないということが記されます。
ところでLCを取得するためにまずその申請に必要な労働局の定める求人活動を行う必要があります。また同時にPrevailing Wageを労働局より取得しなければなりません。これは申請するポジションに対し実際に就労する地域における平均賃金のことです。これは実際の職務内容に必要な専門性や経験のレベルに応じて決定されるもので、いわゆる最低賃金ではありません。このPrevailing Wage取得はSWA(State Workforce Agency)に対しFaxにてリクエストし、指定のフォームに必要条件及び仕事内容等記入することになります。
LC申請段階において雇用主はこのPrevailing Wageをもとにそのポジションをオファーしなければなりませんが、雇用主はLC認可後のI-140申請時に会社として永住権を取得した暁にはPrevailing Wageを支払うだけの財政能力があることを証明しなければなりません。移民局のその判断基準としては雇用主がLC提出時、十分な粗利があったか、またはビザ受益者がすでにその会社で雇用されていればW-2の金額がPrevailing Wageを上回っているか、また利益とW-2の組み合わせがPrevailing Wageを上回っているかなどになります。更にこのI-140申請ではそのポジションに対してビザ受益者が採用条件を満たしているかを証明しなければなりません。
PERM申請が始まる以前のLC申請の主流はRIRでしたが、同時にTraditionalな申請方法もあります。しかしこのTraditionalな申請方法はその審査に数年もの長い時間がかかり、たいへん煩わしいことです。しかも雇用主は就労する地域において一般に読まれている新聞に3日連続で求人広告を出さなければなりませんでした。更にその求人広告に対する応募はSWAになされ、最終的にSWAから雇用主に転送されていました。そこで雇用主はその求職者がなぜ採用されなかったのかについての理由を説明しなければなりませんでした。
一方、RIR申請はSWA(労働局)の監視のもとで求人活動を行うことなく申請が可能となるなどそれまでのTraditionalな申請方法の面倒なプロセスを軽減する形で1998年に導入されました。RIR申請では申請前180日以内にすべての求人活動が終了しており、すべて問題ないということであればその申請書が労働局へ転送されました。ただ245(i)が2001年に導入された時、このRIR申請が殺到したため現在では審査がその申請数に追いつかず、労働局は現在でもその残務処理に追われているのが実情です。
それに対しPERM申請はその審査期間が早いのが特徴であり6-8週間で結果が出ます。ただほとんどの申請結果がこの期間内に結果が出る一方で、必ずしも全てがそういうわけではありません。例えば求人の条件に外国語の能力を必要とすれば、監査の対象となり、結果として結果が出るまでの審査期間が長くなります。またケースによっては不意に却下となっているケースもあります。
PERM申請はその名前が示すとおりオンラインで申請がなされ、まず雇用主はシステムに対し会社登録を行わなければなりません。この会社登録が終わると2つのEmailが返答メールとして送られてきますが1つにはパスワードとユーザーネームが、もう1つには、PIN番号が記されています。
PERM申請には大きく分けて申請ポジションがあり、ProfessionalかNon Professional(どちらに該当するかは労働局に定義あり)かによって申請までの求人活動の方法に違いがあります。例えばNon Professional(4年制大学の学位を持っているまたは2年以上の関係した職務経験があるなど)である場合、雇用主は3つの方法を通して求人活動をすることになります。まず就労地域で一般に読まれている日曜日版の新聞に2回広告を出すこと。そして社内広告を最低10Business days以上行うこと、更に就労する地域のSWA(労働局)を通して30日以上の求人活動(Job Order)を行うことです。この日曜日版新聞には必ずアメリカ人が見ても分かるよう会社名、就労地域、職務内容及び条件を書かなければなりません。参考までに賃金額は載せる必要はありません。また日曜日版新聞は連続した日曜日でも問題ありません。これら求人活動に加えて、雇用主の会社において他の同様のポジションに対してもしWebや紙媒体このような媒体を使った求人活動を通常行っているとすればその媒体を使って活動しなければなりません。
一方Professionalポジションの場合、上記に加え、更に3つの求人活動を行わなければなりません。例えばテレビ、ラジオ、インターネット広告、ジョブフェアー、キャンパスでの求人活動、地元紙、エスニック新聞などが代表的な求人活動媒体となります。
もし雇用主がアメリカ人求職者より履歴書を受け取り、もしその人が求人情報に適切に該当しているということであれば、申請を進めることはできません。またこのPERMにおいて雇用主はその申請に至るまでの経緯をまとめた求人活動報告書を作成しなければなりません。それにはどれだけの履歴書が送られてきて、該当者にはどのような形で面接がなされ、更には断った場合、その理由は何だったかを記載しなければなりません。もし雇用主が誰かを不法に雇用している場合、申請中であるという事実だけでは合法的に雇用しているということにはなりません。更にLCが認可されたとしてもそれは単に永住権の第一ステップが認可されたという意味で、就労許可を得たという意味にもなりません。
PERM申請には費用はかかりませんただ弁護士費用や広告費はかかります。LCには有効期限はなく雇用主は一定の条件を基にLCを他の従業員用に転用することも可能です。
更に現在ではレトログレッションがあり、例えばEB3と呼ばれる永住権申請カテゴリーにおいては例え早い段階でLCが認可されたとしても、永住権の最終段階に進むことができません。これは永住権発給数に年間の上限数があり現在ではその数を申請が上回っていることから生じています。労働局申請を行った順にその数が振り分けられますが現在ではEB3において2001年10月1日に申請した人が最終段階に進むことができており、単純に言えば今、労働局申請したとしたら最悪5年近く待たなければならないことを意味します。従って仮にPERMが早く認可されたとしても、まだ審査中のRIR申請を待っている人の方が結果的には最終段階に速く進めるということになります。
弁護士 デビッド・シンデル
http://www.swlgpc.com/
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