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2010/06/01
Vol.199  移民局による会社査察に対して備えておくべきこと その1

シンデル法律事務所では、最近広く実施されている移民局による突然の会社査察について日系企業から多くの報告を受けています。そこで今回皆さんに、現在、主にH-1Bスポンサー会社に対して実施されている移民局による会社査察の現状及びその会社査察に対して会社はどのような備えをしておくべきかについて解説したいと思います。ここ数週間において、移民局はマンハッタンのミッドタウンに拠点を置く会社を中心に査察を行っており、弊社ではそれら査察を受けた会社から様々な報告を受けております。

昨年移民局により実施された調査報告によると、H-1Bビザ申請の5ケースに1ケースが、H-1Bプログラムに対し詐欺または手法上の違反(technical violations)があったということで、この調査結果が今日の会社査察の増加につながっているものと考えられます。ここで言う手法上の違反とは後で紹介するH-1Bパブリックアクセスファイルの保管義務に関する違反やLCA(H-1B申請に必要な労働条件申請書で会社内での掲載日の情報を別途含むもの)の社内不通知などが該当します。ただこの会社査察の増加の背景にどのような事情があろうとも、H-1Bビザをスポンサーしている会社に対する移民局による突然の会社査察が増えているという事実には疑いの余地はありません。

最近目に付く移民局によるこの突然の会社査察ですが、実際に移民局に提出されたH-1B申請書に記載された通りにそのH-1B従業員がスポンサー会社で就労しているか、また記載通りの就労を行っているかを査察を通して確認するためで、移民局は民間業者と契約をし、その民間業者から査察員を会社査察のために派遣している場合もあります。そのような査察員はビザを申請したスポンサー会社及びH-1B従業員の身元を確認するために作成された質問シートを手に突然会社査察に訪れ、会社及びH-1B従業員がH-1Bプログラムの雇用条件に従った雇用を行っているかを確認します。

その事前の通達もない突然の会社査察の目的は明らかで、H-1Bプログラムの乱用と詐欺を見つけ出すことです。移民局によると違法行為は手法上の違反から明白な詐欺行為に至るまで様々で、その中でも最も多い違反はH-1B申請の際にH-1B従業員に支払うと誓約した平均賃金額以上の給与を会社側がH-1B従業員に支払っていないとう違反です。

そこで一つの議論が発生するのですが、最低限の研修を受けただけの外部民間企業からの査察員による会社査察に対し、現在我々が新規H-1B申請ケースに対して申請費用の一部として移民局に支払っている$500の詐欺防止費用(Fraud Fee)が妥当なものかどうかという点です。これは議論の分かれるところでしょう。

会社の規模に関わらず全ての会社はH-1Bパブリックアクセスファイル(“PAF”)など必要とされる保管書類を首尾よく備えておく必要があります。会社として適切な賃金を支払っているという証拠を揃えるなど、適切な準備ができるかという問題はさておいて、H-1B従業員を抱える会社はオリジナルの認可されたLCA(H-1B申請に必要な労働条件申請書で会社内での掲載日の情報を別途含むもの)、どのようにH-1B申請上の賃金額が決定されたかの覚書き、また関連する平均賃金額データ表のコピーなど必要とされる書類をパブリックアクセスファイルとして保管しなければなりません。更にH-1B保持者として雇用していた従業員が会社事情また個人事情に関わらず退社した場合、適時に移民局にその旨を通達した証拠も保管しておく必要があります。またH-1B就労期限より前に会社都合で解雇となった場合、そのH-1B従業員が最後に滞在していた国への帰国費用を会社が負担したかどうかも証拠として保管しておく必要があります。

(次回に続く)
弁護士 デビッド・シンデル
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