ビザアドバイス
2010/08/03
Vol.203 CBP (税関国境警備局)によるカナダとの国境警備体制は適切か その2
前回に引き続き、カナダとの国境付近における最近の政府による国境警備の実態について、Seattlepi.comからの抜粋を基に興味深い記事の内容を紹介いたします。
実際、カナダとの国境を通してアメリカに不法侵入してくる人の数はメキシコとの国境から進入してくる人の数の1%にしか過ぎません。また実際の不法侵入者は社会に脅威を与える人達ではなく、それら不法侵入者をターゲットとした行き過ぎと言っても過言ではないほどの現在の北の国境警備の現状には多くの疑問が投げかけられているのは事実です。
2008年暮れ、シアトルで弁護士として活躍するSullivan氏はこのような実態の中、国境警備局に対し、国境警備を通して逮捕された微量のマリファナ所持者に対するケースを彼の弁護士事務所に依頼しないよう要請したという、興味深い事実もあります。
一方で、ある国境警備局員はアップステートニューヨークに関して言えば、ロチェスターやシラキュース、バッファローなどニューヨークシティーや中西部の中心都市とつながっている駅、空港、バスターミナルでの警備には効果があるとも述べています。しかしながら、昨年、ロチェスター国境警備局は1,523人を確保した一方で、そのうちの87%が軽罪で、その僅か0.05%のみが刑犯罪として検挙されたに過ぎませんでした。またバッファロー地区を担当するCBPの広報担当官であるPrice氏も、逮捕者の殆どは単なる不法移民であり、そのうちテロリストとしてテロと何らかの関わりを持っている人の逮捕は殆どないと述べています。
事実、最近アメリカ司法省が発表した調査報告書によると、9.11同時多発テロ以降、カナダとの国境警備により捕らえられたテロ関係者は僅か1名だったということです。実際、2008年CBPによる検挙のうち90%が一般的な不法移民に関するもので、殆どが強制送還や不法滞在後の違法なアメリカへの再入国に対するものでした。
ロチェスターで移民法に関する支援プログラムを実施しているディレクターのRuehle氏は次のように語っています。“CBPは確かに数としては多くの逮捕数を上げているかもしれません。しかし彼等は実際テロリストとして捕らえるべき重要人物のリストに出てくるような人々を捕らえているのでしょうか?”と。
ここでニューヨークでの事例を一つ紹介します。あるバレンタインの日、Chet Childersさん(36歳)はウクライナ人のTetyana Tsymbalさん(26歳)と結婚しました。Tsymbalさんのアメリカでの就労ビザは切れていたのですが、アメリカ人である夫のChetさんをスポンサーとした永住権申請については、住まいとなるChetさんの故郷ワシントン州に到着後行う予定でいました。結婚3日後、二人はワシントン州へ向かいアムトラックトレインで移動途中、Tsymbalさんは、シラキュースにて突然列車に乗ってきた国境警備局員により捕らえられ、その後、身柄を拘束されたそうです。結局Tsymbalさんは保釈金の$5,000が支払われるまで約1週間、刑務所に身柄を拘束され、現在ワシントン州にて移民法裁判所から意見聴取のための召集要請を待っています。
(次回に続く)
弁護士 デビッド・シンデル
http://www.swlgpc.com/
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