ビザアドバイス
2010/09/21
Vol.206 2011年度新規H-1B申請状況、及びH-1Bビザ申請に関する政府の厳しい対応 その1
今年も2010年4月1日より2011年度(2010年10月1日~2011年9月30日までの就労開始)新規H-1B申請受付(この記事で言う申請H-1Bとは、年間上限枠内での申請として見なされるもので、雇用主の条件により一部対象外の申請あり)が開始されました。一昨年まではH-1Bビザは大変需要の高いビザの一つとして、4月の申請受付開始早々に年間上限枠(通常枠:6万5千件、米国修士号枠:2万件)に到達していた一方で、昨年は金融不安とともに、景気後退等の影響も受け、2009年12月の年末近くまで年間上限枠に至らないという状況もあり、今年の申請状況がとても注目されておりました。
先日、移民局から2011年度の新規H-1B申請状況の発表があり、この記事を書いている時点での最新情報として、2010年5月6日現在、約18,000件の新規H-1B申請がなされており、米国修士号枠に対しては約7,600件の申請が移民局にて受け付けられているということです。当初の予定では昨年に引き続き、一般に受付開始早々の多くの申請の殺到は予想されてはいませんでしたが、結果、昨年のペースを下回る現時点までの申請書類受付状況です。これもやはり昨年同様、経済の状況が芳しくないのにあわせて、移民局によるより厳格な審査もその理由の一つにあげられるかもしれません。
そこで、既に皆様の中には既にご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、移民局は2010年1月8日、H-1B申請において重要な転機となるメモ(ニューフェルドメモ)を発表しました。このメモを見るとH-1B審査について益々の厳格さを伺わせる内容となっており、H-1Bビザに関する法律は変わらない一方で、これまでのH-1B申請規定が根本的に変わることを通達しているもので、H-1Bスポンサー会社以外の場所での従業員の雇用、自分の会社での自分自身の雇用、契約社員の雇用、派遣社員としての雇用をはじめ、そうではない自社内での雇用など、通常のケースにおいても同様に申請に影響を及ぼすことが想定される大変重要な内容となっております。例えば、H-1Bスポンサー会社以外の場所でH-1B従業員の雇用を予定している会社による申請など、H-1Bによる雇用が正当であることを立証するために、今までは求められていなかったような様々な追加証拠書類を用意しなければならず、今後H-1B従業員の雇用を考えているスポンサーする会社にとっては特に注意が必要となります。更に今回のこのメモにはH-1B延長申請に関する新しい規定も付け加えられており、同様に今後H-1B延長申請を検討している会社や個人は、今回の新規定に則り、これまで以上に入念な申請書類の準備を進めることが必要となるでしょう。
今回取り上げられている問題の中で特に移民局が重要視しているのは、その正当な雇用主対非雇用主の関係、つまりH-1Bをスポンサーする会社とH-1Bを基に就労する従業員の間に正当な労使関係(“employer-employee relationship”)が成り立っているかという点です。
移民局はその正当な労使関係が存在するかを判断する際、H-1Bスポンサー会社に対してH-1B従業員雇用に対する十分なレベルの管理体制があるかどうかを確認します。もし従業員がスポンサー会社の所在地で、その会社のために就労している場合、この点に関しては比較的説明は難しくないでしょう。しかしシンデル法律事務所では、そのようなスポンサー会社の所在地内でのH-1B雇用も含め、H-1B申請を行う全ての会社は、最初に移民局に提出する全てのH-1B申請書類に対して、このメモで示されている労使関係に関する明確な説明及び証拠を盛り込むべきであると考えております。
(次回に続く)
弁護士 デビッド・シンデル
http://www.swlgpc.com/
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