ビザアドバイス
2011/02/15
Vol.216 米国国境強化緊急法成立でビザ申請費用アップへ
先日、移民法に関わる驚くべきニュースが飛び込んできました。米国政府は、更にまた外国人雇用に関わる企業からお金を吸い上げるのか、と思わせるようなニュースですが、アメリカ南部の国境強化のため更に6億ドルの予算を投じる法案がオバマ大統領の署名を経て8月に成立しました。その6億ドルにも及ぶ莫大な予算の財源ですが、表題にもあるようにH-1B、L-1など外国人を雇用する際に移民局へ申請する申請費用を値上げすることにより捻出することになっています。今回成立した当法律によると、総従業員数50名以上の会社は、そのうち50%以上の従業員がH-1BまたはL-1ビザ保持者である場合、L-1ビザ申請1件につき、移民局申請費用が$2,250、更に同様の会社条件の下、H-1Bビザ申請一件につき、$2,000値上がりすることになりました。現在、H-1Bの移民局申請には申請費用$320、詐欺防止費$500(新規申請のみ)、トレーニング費$1500(総従業員が25人以下の場合は$750で、同じ会社での2回目の延長申請以降は免除)が、またL-1の移民局申請には申請費用$320、詐欺防止費$500(新規申請のみ)が移民局への費用としてかかっており、仮に特急申請を必要とする場合、追加で$1,000の支払いが必要です。それが、今回の申請料金引き上げにより、特急申請を使わない場合でもL-1申請で$3,000以上、H-1B申請で$4,000以上の申請費用がかかる計算になります。
そこで今回の法律が実際にはどのような記載されているか直訳したものを紹介します。
“ SEC.402.(a) 今法律またはその他法律の如何なる条項に関わらず、今法律施行から2014年9月30日の間、移民法section 101(a)(15)(L) of the Immigration and Nationality Act (8 U.S.C. 1101(a)(15)(L))に基づいて非移民ビザ保持者として、アメリカ入国のためのビザ申請のために提出が必要な申請費用そして詐欺防止費用は、申請する企業が、そのアメリカにおける総従業員数が50名以上であり、もしその全従業員のうち50%以上の従業員が移民法section 101(a)(15)(H)(i)(b)または section 101(a)(15)(L)に該当する非移民ビザ保持者である場合、$2,250値上げされるものとする。”
“ SEC.402.(b) 今法律またはその他法律の如何なる条項に関わらず、今法律施行日から2014年9月30日の間、移民法section 101(a)(15)(H)(i)(b) of the Immigration and Nationality Act (8 U.S.C. 1101(a)(15)(H)(i)(b))に基づいて非移民ビザ保持者として、アメリカ入国のために提出が必要な申請費用そして詐欺防止費用は、申請する企業が、そのアメリカにおける総従業員数が50名以上であり、もしその全従業員のうち50%以上の従業員がそのような非移民ビザ保持者または移民法section 101(a)(15)(L)に該当する非移民ビザ保持者である場合、$2,000値上げされるものとする。”
メディア報道の中には今回の法律は外国を拠点とした会社に対してのみ適用される法律であると指摘していますが、それは正しくはありません。更に非移民ビザを悪用してきている企業にのみ適用されると指摘している一部報道もありますが、これも解釈は間違っています。多くの保守主義者は、H-1Bプログラムの多くが犯罪行為のように悪用されている、と単純に考えているのですが、新法の内容からすると、規定に従って賃金をしっかりと支払っているなど正当にH-1B雇用を実施している企業まで巻き込んでしまうこととなります。むしろ今回のビザ申請料の引き上げで、非移民ビザの悪用に関する問題を解決しようとすること自体に疑問を持たざるを得ません。
弁護士 デビッド・シンデル
http://www.swlgpc.com/
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