ビザアドバイス
2014/01/07
Vol.285 外国人実業家のH-1B申請について - その2
2010年1月8日に米国移民局のNeufeld氏 が公表した覚書(Neufeld Memo)により、H-1Bを申請する外国人就労者が、スポンサー会社の所有者でもある場合、H−1Bビザの申請基準が更に厳しくなっていた状況にありました。
ただその後、アメリカ経済が低迷する中、アメリカ政府は、外国人実業家の米国進出を妨げているとの批判を受け、その状況に対する解決法の一つを公表しました。2011年8月に米国移民局が発表した、質疑応答形式の覚書上でこの解決法について説明されていますが、外国人実業家がH-1Bを利用し続ける可能性に光が灯るような内容でした。この書面上で、移民局は、H-1B申請者がスポンサー会社の主要株主である場合でも、なんらかの外部監査が存在し、H-1B申請者の雇用に関する裁断権を会社の所有者以外が有することを証明できれば、労使関係が存在することを認めるという姿勢を示しています。例えば、会社の所有者から独立した取締役会(社外取締役)などが設置されている場合、がその具体例として挙げられています。
この覚書の一部分を下記に抜粋します。
“...スポンサー会社に、会社の所有者から独立した取締役会(社外取締役)が設置されており、その社外取締役会が人材の採用、解雇、賃金の支払い、業務の監督についての決定権を保持している証明を提出することで、H−1B申請者は、労使関係の存在を示すことが可能。”また、移民局は、オンラインポータルEntrepreneur Pathways ( http://www.uscis.gov/portal/site/uscis/eir ) を設け、ポータル上でも労使関係をどう立証できるのか説明しています。上記の覚書内の説明を見ると、外国人実業家が継続してH−1Bビザを申請できるようサポートしていこうという移民局側の姿勢もみられます。
移民局は、H-1B申請上重要な 労使関係の立証に関し、会社の所有者から独立した取締役会(社外取締役)が設置されていることを証明することの他に、優先株主や投資家の存在等を明記することで、会社がH−1B就労者の雇用に関する決定権を保有している事実を立証できると説明しています。これらの証拠を提出することで、H-1B実業家の会社での権限と、会社の実業家の雇用に関する決定権との境界線をクリアにすることができます。これらの移民局の見解を踏まえれば、現在でも、外国人実業家のビザオプションとしてH−1Bビザ取得のオプションを考慮できるケースもあります。もちろん、このビザオプションでの申請に関しては、その他色々なハードルもありますが、2011年に公表された覚書により、前年に発表されたNeufeld 覚書が生んだH−1Bビザ申請に関する懸念材料の一部が緩和されたといえるでしょう。
一方で、雇用ベースの永住権申請に必要であるPERM(労働条件認定書)の申請に関しては、移民局ではなく米国労働局が審査を行っています。労働局も、永住権申請者がスポンサー会社を所有している ケースに対し、非常に厳しい審査を行っており、このようなケースに該当する申請者については、労働条件認定書の取得が非常に難しい現状にあります。こうした点も踏まえると、外国人実業家に対し、仮に非移民ビザであるH−1Bビザを取得するオプションの道が開けたとしても、実業家がアメリカへの永住を考えている場合には、自分自身が会社を所有している会社を通してのPERM(労働条件認定書)申請以外での永住権の申請オプションを模索する必要があると言えるでしょう。
弁護士 デビッド・シンデル
http://www.swlgpc.com/
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