ビザアドバイス
2003/04/21
Vol. 35 移民法ニュース4月号
自由の盾作戦
国家安全省は、テロ対策を強化する「自由の盾」作戦のもとに特定の国からの難民をすべて自動的に拘留する新政策を開始した。特定の国とはイラクを含む中東各国や中央アジア、東南アジアの計33カ国と、ヨルダン川西岸、ガザ地区である。東南アジアでは、タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシアなどが対象となる。国家安全省は自動拘束をテロ阻止の有効策である根拠として、国連本部ビル爆破計画などで終身刑判決を受けたオマル・アブデルラーマンのケースを揚げている。亡命申請者が米国でテロを実行した実例である。しかし自国で迫害を受ける人たちを、単純にその出身国・地域を理由として拘留するというのはいささか問題である。人権擁護弁護士委員会のエリノア エイサーは「大統領は、イラクとの戦争を解放のための戦争であり、イラク国民を攻撃するものではなくイラクの指導者を攻撃するものだとして、この戦争を正当化している。しかし、「自由の盾」作戦は、イラク人を含む各国の個人をその国籍だけを理由にして標的としているのであり、難民希望者をこのように取り扱うことは、自由を守るというよりも、馬鹿にしていると言わなければならない。」と指摘している。またルベルス国連難民高等弁務官は、「亡命や難民の申請者をテロと結び付ける傾向は危険だ」と米当局への書簡で警告した。
このような事が行われたのは、1941年12月のパールハーバー攻撃以来のことであり、そのときには西海岸を中心とした日系人が大規模に収容された。多くの人々が、戦時に於ける自由の制限は必要であると認識しているが、一方でこのような手段が有効であるかどうかを検証することが重要である。9月11日以降に採られた数々の処置が、国家の安全を強化するという効果を生み出したかどうかは、非常に疑問である。数多くの男性がこの特別処置の対象になったが、これまでのところその中からテロリズムに関連があるとして逮捕された者は出ていない。第二次大戦で収容された数多くの日系人も誰一人、スパイ活動または破壊活動に携わったとされた者がいなかったのと同様である。2003年3月20日(木)には、BICE(移民国境警備強化局)とFBIの共同班が合衆国に不法滞在していると思われるイラク人を捜索、逮捕し始めた。
ビザの発行方針
国家安全省はアメリカ領事館におけるビザ発行についての方針設定、及びトレーニングを実施しようとしており、国務省との間で、2省間の役割と責任範囲を明確にすべく、覚書を作成中である。既に起こった変化は、領事がビザの発行を拒否した場合、発行拒否のデータは直ちに、両省共通のデータベースに記録される。これは一度ビザの発行を拒否された外国人は、次の発給がさらに難しくなることを意味している。
社会保障番号を受け取れるのは誰?
最近提案された規則では、連邦、州、地方の公共恩典以外の目的による社会保障番号の付与を行わない意向となっている。運転免許の取得必要性は、一般的な公共の恩典とはみなされないため、運転免許取得のための社会保障番号の付与は行われない。社会保障局は、「ここ数年各州に対し、現行法に変わる識別方法を見つけるよう要請してきた。われわれは、労働許可を持たない外国人滞在者が社会保障番号以外の方法で、運転免許の取得、あるいは車の登録ができるような代替案を作るよう、さまざまな努力を続けてきた。公共の負担を最小限にすることと、一方公共の利益を守ることのバランスを取るよう努めてきたし、運転免許の取得のためには社会保障番号を取得しなくてもいいようにすることが、そのバランスを取る手段であると考える。」としている。実際、EまたはLビザ保有者の配偶者は労働許可を取得することが出来るため、従って社会保障番号を取得することができる。しかし、学生ビザのような労働許可のない非移民ビザ保有者は、運転免許の取得に大変な苦労をすることもある。もちろん州により、またDMV担当官による相違はあるものと考えられる。
社会保障番号のミスマッチ
昨年、ミスマッチのレター(従業員の社会保障番号がデータベース上にある該当者の名前と合致しない通知)が増加していることをお伝えしたが、今年はその方法が変更され、2002年に900,000に達したのに比べ、今年はおよそ130,000件に減少する見通しである。しかしながら、このレターに載せられる従業員の数そのものは、昨年の不適合レターに載った7百万人からあまり減少しないものと予想される。今回の方法変更は、修正情報を提出する雇用者はほとんどいないだろうという事、及び受け取った情報の多くは依然としてデータベース上の情報と一致しないだろうとの前提に立って行われたものである。IRSはSSAに不正報告をした雇用者に50ドルの罰金を課す権限を与えられており、罰金を課すためのプログラムを作成した後、この規則を適用することを計画している。IRSは、2002年度に行われた違反行為に対し、2004年にも罰金を課すことにしていると発表した。
弁護士・デビッド・シンデル
http://www.swlgpc.com/
http://www.swlgpc.com/