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2003/06/02
Vol.38  移民法ニュース6月号
ビザ申請者は全員面接 !?

5月16日付けのウオールストリートジャーナルは「ビザ申請者ほぼ全員の面接を計画中」という記事を載せています。この記事によれば、大使館でビザスタンプを申請する場合、全員が面接を受けることになるのではないかというもので、移民局がビザの申請者に対して面接を行うという話ではありません。仮に全員面接となると、ビザ取得の時間が長期化することは避けられないものと考えられ、雇用側は採用のタイミングや、駐在員の赴任計画が大幅に狂うという事態も覚悟しなければなりません。現在移民局での審査期間は長期化する傾向にあり、さらに、ただでさえ人手不足の大使館で全員面接が実施されたら、審査期間がどのくらい延びるのか予想もつきません。ただ同紙では「商用及び観光のビザが必要とされていない先進27カ国の国民は影響を受けない」としていますが、もしそうだとしたら日本は除外されるかもしれませんが、就労ビザもその対象となるのか否かハッキリトはわかりません。同紙は国務省の事務当局が既に数ヶ月前から、ビザ面接の強化について、旅行業界、企業、貿易、大学関連のグループからの意見聴取を進めており、最近になってこれらのグループに対し、既に新しい方針を具体化しつつあると連絡してきていること、などが記述されています。さらに国務省のスポークスマンStuart Pattの発言を次のように紹介しています。「申請者の90%が面接を受けることになると考えてもらってよい。」「その国の旅行者がビザ違反を多く出しているかどうかという、過去の経験により例外を作ることはあり得る。」この発言を記事の根拠としているのかもしれませんが、米国務省はこの記事に対し、肯定も否定もしておらず、どんな具体策を考えているかも明らかにはしていません。ですから本当に全員面接となるのかは正式な発表があるまで待つしかありません。
さて、移民局の再編成や各審査の長期化、提出書類の増加している理由は、9.11の19人のテロリスト全員がビザを取得しており、うち少なくとも13人は面接を受けていない、また二人は「テロリスト監視リスト」に載っていた事実が明らかになり、議会から大使館、領事館、それを管轄する国務省への批判が出ていることからも容易に想像がつきます。根底にはアメリカは自国の安全を保障するための手段を着々と強化しており、今回の「全員面接」が現実となっても、この安全保障強化の一環として捉えるべきです。一方で、移民がアメリカ経済の重要なプラスファクターであるという側面を軽視するべきではありません。米労働市場研究センターの調査によると、1990年代の10年間、移民がアメリカの人口増加の40%を占めており、労働人口の増加では50%、男性労働者の増加のなんと79%が移民の増加によるものです。そしてセンターは、1990年代のアメリカの経済的成功は、新しい移民労働者によるところが非常に大きいと結論付けています。そして今、アメリカでは、1950年代のベービーブームの時代に生まれた人たちが退職の時期を迎えており、彼らの穴を埋めるべき労働者の不足が深刻になってきています。従ってもっとたくさんの移民を受け入れることは、アメリカ社会に貢献し、退職者の費用を負担する、若い労働者を受け入れることを意味します。ウオールストリートジャーナルの記事の中にもあるように、いたずらな面接強化は、GEやコカコーラといったアメリカの大企業にも大きな悪影響を及ぼすことになります。こういった大企業は、世界中の顧客、パートナー、労働者の自由な移動によって、その活力を得ているのです。世界情勢を見据えながらも「移民の国アメリカ」らしい政策を期待します。
弁護士・デビッド・シンデル
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