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2003/03/03
vol.5  アメリカ経済の低迷とH-1b

アメリカ経済の低迷が多くのマスコミで取り沙汰されています。アメリカ全土において、数千人規模の労働者が、解雇・一時解雇されていると伝えられています。H-1b労働者は、ビザ申請雇用主の下で働いていなくてはなりませんから、大きな不安を抱えていらっしゃる方も多いことでしょう。経済不振の影響で、H-1b雇用主たちにも、大きな経済的プレッシャーが課せられており、経費の節減を余儀なくされ、一旦H-1b労働者を雇ったものの、移民法上で定められた諸条件に従えなくなる雇用主が増えていると聞きます。

例えば、就労目的でH-1b労働者が入国した後も、数ヶ月間にわたって、仕事につかせず、給与を支払わない、というケースもあります。また、H-1b雇用主は、prevailing wageと呼ばれる規定の賃金を支払わなければなりませんが、この規則に反して低額の給与を支払っている雇用主も多いと指摘されています。

H-1b雇用主には、米国労働局や移民局によって規定された数々の義務が課されています。これらの規定は、H-1b労働者のみならず、US労働者(アメリカ市民・永住件保持者)を保護するために、設けられたものであり、労働局・移民局ともに、雇用主がこれらの義務を法に従って履行しているか、厳しくチェックします。例えば、H-1b雇用主はその地域・職種における平均的賃金もしくは、雇用主がその職種にたいして実際に払っている賃金のうち、どちらか高いほうの金額以上の賃金を、支払わなければなりません。また、同職場内のUS労働者に適用される雇用上のベネフィットをH-1b就労者にも与えなければなりません。一旦、労働局から許可が下りたら、雇用主は、LCA(Labor Condition Application)と呼ばれる許可証を「公共からのアクセス可能なファイル」に保管しなければなりません。このファイルには、以下の書類を同封する必要があります。
1.H-1b労働者に対して支払われる賃金額
2.賃金額の算定基準
3. 州職業安定除(SESA)、賃金調査機関、その他指定の平均賃金査定方法によって提示された就労地域での平均賃金額
4.労働組合がある場合には、労働組合に対する通知書のコピー
5.社内での同ポジションの従業員に対して、同等のベネフィットが与えられていることを裏付ける、ベネフィット計画説明書

雇用主による従業員の不当な取り扱いは、通常、従業員本人が訴えて出た場合にのみ明るみに出ます。労働者は、現在どのようなビザステータスにあるかに関わらず、現雇用主や過去の雇用主を訴えることができます。また、移民法の内部告発者保護規定(whistleblower規定)によって、会社側は、社内の従業員から訴えが出されたことを知ってからも、その従業員を威圧・脅迫してはならないことになっています。

次のような場合には、H-1b労働者に、会社側への損害保証請求が認められています。
1. 会社側が、H-1bビザ申請を行った際に提出した労働許可証(LCA)において明記された平均賃金額に満たない賃金を支払った、もしくは支払っている場合
2. LCA上の平均賃金額を満たす賃金の支払いを受けているが、実際の就労地がLCAで記された就労地域と異なっており、実際の就労地域での平均賃金額がLCA上の平均賃金額を上回っている場合
3. H-1bビザが取り消しや無効になっていない状態で、会社側の業務自体が縮小されたためH-1b労働者が労務に携わらず、その間、賃金の支払いが、停止された若しくは現在停止されている場合
4. 移民局からのH-1bビザ申請に対する許可がおりてから30日以内、もしくは就労開始日から30日以内のどちらか早いほうまでに、雇用条件として提示された賃金が、支払われなかった場合
5. 会社側から一時解雇された場合で、支払われた退職金・その他の補償金が、同社に解雇された他の従業員への支払いよりも低額であると言う証拠を提示できる場合

通常、労働局は、雇用主側に対して支払い賃金台帳や人事を見なおさせるだけの十分な根拠を備えている訴えのみ、審査に取りかかっているといわれています。法律に違反していると判定された雇用主には、罰金が課されるだけでなく、H-1b労働者を雇用することが禁止されます。H-1b従業員を多く雇用し彼らに大きく依存している企業にとっては、非常に厳しい制裁となりえます。

雇用主を訴える場合には、社内の他のH-1b労働者も同じような不当な取り扱いを受けていることを証明出来るかどうかが非常に重要なポイントとなります。個々の従業員の訴え内容の信憑性を高めるからです。

いずれにせよ、労働局に訴える前に、雇用主側と十分に協議し、未払い賃金や費用の返還に対する合意を取り付けるのが、もっとも望ましい解決方法でしょう。雇用主側は、不当な取り扱いを受けたと主張する、かつての従業員が、労働局に調査依頼を訴え出る前に、協議による合意を取りつけるために出来る限り努力すべきでしょう。
移民とテロ問題
ワールドトレードセンターとペンタゴンへしかけられた9月11日の同時多発テロ事件。テロの脅威と戦うために、ブッシュ陣営は、新法案を提出しました。この法案には、テロに対する戦争においてアメリカが勝利するために本来その存在が不可欠であるはずの「自由」というものを、結果的に、束縛しかねない方策が取り入れられています。これは、「自由」を守るためには、間違った方法であると、考えています。
ホワイトハウスの提示した法案が法律として制定された場合、法務長官は、裁判所に何の証拠も提出せずに、テロ行為の容疑者を拘留もしくは国外追放することが出来るようになります。公聴審理や、逮捕に反論するための機会、逮捕行為が正当な理由に基づいたものであるのか否かを移民局が審査する際に従うべき重要な審査基準も設けられていません。この法案によれば、永住権保持者であっても、容疑者と見なされた場合、国外追放される場合も出てきます。法務長官が、当該容疑者に、テロ行為を行った若しくは幇助したと「信ずるに足るだけの証拠」があると判断した場合、その一存で、このような措置がとられることになります。
こういった行政機関による国外追放措置には、通常の裁判所の審査権が及ばないものとされており、唯一、米国コロンビア特別区上訴裁判所にのみ訴え出ることが認められています。テロ容疑者の拘留措置に対しても、米国コロンビア特別区上訴裁判所にのみ訴え出ることが認められていますが、最終的な国外追放命令が発せられて始めて裁判所に訴えることが出来ると定められています。
私は、何も、テロ行為に対抗するために法律を制定すること自体に、問題があるとは考えていません。しかし、我々は、常に、自由を守るための適切な措置を講じておかなければならないと考えています。どんなに大きな危難が伴おうとも、またどんなに大きな憤りを持ってしても、決して妥協してはならない、守られるべき自由というものがあります。9月11日の同時多発テロ事件は我々米国市民を震撼させました。しかし、だからこそ、私達は、今この瞬間は冷静になって、私達が何と対峙すべきで何を守っていくべきなのかをしっかりと見極めておく必要があります。
私のこのような考え方を、陳腐な感傷主義で時間の無駄だ、とお考えになる方がいらっしゃるならば、次の有名な文句を思い出してください。「If they come for me in morning, my friend, they will most surely come for you at night.」
弁護士・デビッド・シンデル
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