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2003/03/03
vol.7  I-140とI-485の同時申請

移民局が、7月31日に発表した新規則によれば、今後、当局はI-140(雇用ベースの永住権申請)を移民局に申請する際に、同時にI-485(ステータス変更申請)も同時に受け付けてくれることになります。ただし、同じ雇用ベースの永住権であっても、すでにPriority Date(※1)に達している場合のみしか同時申請はできません。したがって、I-140とI-485の同時申請を行えるのは、EB1、EB2、EB3とよばれる優先順位の高い3つのカテゴリーの永住権申請を行う方に限られます。

労働許可取得が免除される最優先カテゴリーの申請以外では、まず労働局から労働許可の認可を得て、その後、移民局へ永住権申請(I-140)を行いますが、その際に同時にステータス変更申請(I-485)も提出できることになります。日本人の場合、殆どの申請者がEB1(国際企業の管理職・重役)、もしくはEB2(高学位を取得した専門家)、EB3(専門職・熟練労働者)ですので、こういったケースではPriority Dateに到達していますから、今回の新規則に従って同時申請を行うことができるようになります。移民局によれば、同時申請によって、より「効率の良い」審査が行えるだろうとのことです。

(※1)Priority Date
年間発行数が決まっている移民ビザの申請では先着順にビザが認可される仕組みになっていますが、Priority Dateとはその優先順位を決める基準日のことです。雇用ベースの申請では、労働局が労働許可申請を受理した日付がそれにあたります。

しかし、I-140とI-485の同時申請により、審査期間が実際どのくらい短縮されるのかは今のところ予測できない状況です。現行の審査制度の下では、I-140認可後の最終審査を日本の米国大使館でおこなえば、I-140が認可されてから3ヶ月~6ヶ月程度で面接を受けることができていますが、I-485を申請して米国内でのステータス変更を希望する場合には、I-140認可後18ヶ月以上待たないと面接を受けられないといった状態でした。(この期間は、勤務地をど移民局が管轄するかによってことなります)
このたびの移民局の新規則によって、導入されることになるI-140とI-485との同時申請をして米国内でステータス変更を行ったとしても、結局は、I-140申請のみ行って米国外の大使館における最終面接(consular processing)を行った方が、短期間で永住権を取得できるのではないかともいわれています。

今回の新規則では、主たる永住権申請者の配偶者や子供(21歳以下の未婚の子に限る)も、ステータス変更申請を行うことが認められています。

以下、この新規則によって導入される同時申請の申請方法を大まかに説明します。
I-140とI-485の同時申請をする場合、移民局に以下の書類を提出します。
「I-140申請書およびI-140申請費、I-485申請書およびI-485申請費、およびサポーティング書類(出生証明書、移民局指定の医療機関から発行された健康診断書、写真、これまでの滞在ステータスに関する証拠書類)」
上記書類一式を、I-140申請の勤務地を管轄する移民局サービスセンターに提出します。advance paroleや、work permitが必要な場合には、I-140に伴って、それぞれの申請費とサポート書類を添付して同時申請することが認められます。

すでに単独のI-140申請を行って、現在審査待ちの方の場合には、I-140の認可が下りる前に、本人と家族の各I-148申請を提出できることになります。この場合には、I-485申請書類一式と申請費に、移民局からのI-140申請受領書のコピーを添えて移民局に提出します。
今回の新規則では、明確には示されていませんが、すでに「大使館面接希望」と、記載したI-140申請を提出してしまった場合にも、現在審査待ちであるならば、新たにI-485を提出しステータス変更手続きを申し込むこともできると言われています。

EB4(宗教活動家)とEB5(投資家)カテゴリーでの永住権申請については、この度の新規則で導入される同時申請は行えないことになっています。また、過去にJビザを取得された方で、現在も「2年間の国外居住条件(home residency requirement)」の対象者となっている方も、I-140とI-485の同時申請を行うことはできません。

このI-140・I-485同時申請の導入によってもたらされるメリットとして、次のようなものが挙げられています。
・ 現在の滞在ステータスが間も無く失効してしまう場合には、I-485申請を行うことでステータスの保持が容易になる。H-1bやLなどの非移民ビザステータスの非移民は、同ステータスを保持・更新しなければならないと言う義務から開放されます。
・ 審査待ち期間中に、本人・家族が、就労許可や再入国のための許可を早期取得できるようになること
・ 最終的に永住権が取得できるまでの審査期間の短期化(ただし、これについては、目下のところ、疑問視する意見が大きい)
・ これまでは別個に提出されていたI-140とI-485を関連付けて申請することで、移民局審査官の審査上のミスを軽減することができる


一方、同時申請制度導入のデメリットとして次のような事項が挙げられます

・ 基となるI-140申請が、移民局によって認可されなかった場合に、I-485申請費や健康診断書費用などが無駄になること。特に、新規則導入後は、当局側が新システムを効率的に運用できるようになるまでの間、審査期間の長期化が予測されており、審査中に永住権スポンサーをしている企業が買収されたり、解雇されたりした場合に、申請に関わる費用が無駄になってしまうことが懸念されている。
・ 同時申請の受付が開始されると、雇用ベースの永住権申請や家族ベースのF2A(永住権保持者の配偶者及び未婚の子供)、F2B(永住権保持者の21歳以上の未婚の子)申請におけるPriority dateが後退する可能性がある。
・ 同時申請する際に、事前に指紋押捺や国家安全保障上の身分証明が必要になるようだと、就労許可書やadvance paroleの申請に関しては、今までよりも審査期間が延びてしまう可能性がある。

この度の「I-140・I-485の同時申請」の導入は、移民局の審査制度にとって非常に大きな転換期となるだろうと考えられています。移民局が今回の新規則の運用方法を十分に把握し、スムースな審査が行えるようになるまでの間には、まだまだ日数が必要でしょうし、その間の審査に混乱が生じる可能性は十分にあります。また、今回の新規則の運用に関しては不明瞭な点も多く指摘されており、当局側の説明が待たれるところです。
更に、現在非移民ビザ申請で行われている特急審査制度(premium processing)のI-140永住権申請への導入が実現すれば、「移民局へのI-140申請→大使館面接」という方法での永住権取得が劇的に短期化されることになり、ますますconsular processingが永住権取得への最短ルートとして位置付けられることになるでしょう。こうなれば、米国内でのステータス変更(I-485)申請そのものが一層敬遠されることになるかもしれません。
弁護士・デビッド・シンデル
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