ビザアドバイス
2004/06/21
Vol.61 フィラデルフィアで開催された米国移民法弁護士協会会議からの最新情報
6月9日~6月13日にフィラデルフィアで米国移民法弁護士協会(AILA)の定例会議が開催されました。その会議に私も参加しましたが、その会議で得られた最新の情報をQ&Aを通してご紹介します。 質問
ここ数年話題となっているPERMプログラム(労働局での申請手続きにおける新制度で永住権申請第一段階の過程を大幅に短縮するプログラム)の施行はいつ頃になるのでしょうか?
答え
労働局では、このPERMプログラムに関して、その最終的な規定の発表を間もなく行うと述べていましたが、今のところ何も発表がありません。我々は今年中には何らかの答えが出ると信じており、遅くとも来年中にはPERMプログラムが施行されることを期待しています。一方労働局では、ニューヨークやニュージャージーなどで過去3年ほど問題となっている残務の軽減を促進させることとなります。それら残務をより早く処理するために審査書類は地方のセンターに送られることとなるでしょう。 質問
US VISITプログラム(顔写真や指紋をコンピューターに記録し、出入国を一元管理する外国人登録システム)についてお聞かせください。
答え
今年の10月までに、全ての非移民ビザ保持者による米国入国には指紋採取と顔写真の撮影が義務づけられます。そしてビザ免除プログラムを認めている国々の人々に対しても同様のプログラムを実施することになります。更に、このビザ免除プログラムに関しては、米国入国の際、生体識別情報を含む機械読取式パスポート(Machine Readable Passport)が必要となります。しかしながらほとんどの国では技術上の問題でその期限までの導入は困難視しているため、米国議会はこれらの国々がこのプログラムを確実に実施できるよう同措置の実施を2年間延長するものと思われます。 質問
米国国務省(米国大使館・領事館)へのビザスタンプ(査証)申請に関する今後の方針を教えてください。
答え
2004年7月1日より、H・Lビザスタンプを含めた非移民ビザスタンプ申請に関して、ビザスタンプの更新も含め、全ての申請者(例外として外交ビザまたは国際機関ビザの申請者および80歳以上または13歳以下の申請者は引き続き面接が免除される)に対して、その申請者の住む管轄区に応じて東京の米国大使館もしくは大阪の米国領事館にて面接を受けなければなりません(カナダなどの在外大使館・領事館での面接はこれまで通り可能)。米国大使館・領事館は面接の日時を増やす予定はありませんが、申請者の増加に応じて面接を行う職員を増やす予定でいます。それら非移民ビザスタンプ取得のためには、大使館・領事館のホームページを通して面接の予約が必要となります。今後はそれら非移民ビザスタンプの申請のためには実際に在外大使館・領事館へ直接出向く必要が出てきます。その最大の理由は、2004年10月24日より全ての非移民ビザスタンプの申請者に対して、指紋の採取が義務付けられたためです。そこで、米国大使館では非移民ビザスタンプ申請者のためのこの新しい方針に適切に対応していくために7月は移民ビザ申請者に対する面接は行わないことにしています。
先述のことに伴い、我々は米国国務省のビザスタンプ更新手続きの処理を行う部署が閉鎖されるであろうという通知を受けました。もし、2回目以降のH-1b、L、Eビザスタンプ等の更新申請を行う際、今まではセントルイスもしくはワシントンDCの部署がそれらビザスタンプの申請書類を郵送にて受け付けてきました。しかしながら、指紋採取の義務付けにより、在外の大使館・領事館へ直接出向いての更新手続きが必要となるため、米国国務省はそれら米国内のビザスタンプ更新手続きを行う部署を閉鎖する予定でいるのです。これら部署へのビザスタンプ申請は10月24日からの指紋採取の義務付けに伴い、それまでに郵送で受領した書類の審査を終了させるために7月16日に受領される申請書類を最後に郵送によるビザスタンプの更新申請を打ち切ります。また、米国国務省は移民局との議論のなかで、ビザスタンプ更新申請の処理を行う部署を再開することができるよう生体識別データ処理用の設備の使用を検討していますが、現段階においていまだ正式な発表はありません。 質問
私は、移民局が2004年度(10/01/2003~09/30/2004)のH-1bの申請受付を終了し、現在では2005年度(10/01/2004~09/30/2005)の申請が2004年4月1日より開始されていると聞いています。私は以前、H-1bを保持していたのですが、その後、B-1ビザに切り替え現在に至っています。私は再度H-1bビザステータスに戻りたいと考えていますが、そのような場合、私は2005年度のH-1bビザ年間上限枠の対象となるのでしょうか。
答え
あなたがもし過去6年以内にH-1bビザを保持していたと言うことであれば、例外もありますが、あなたはH-1bビザ年間上限枠の対象とはならないでしょう。つまり、あなたは申請したH-1bビザにて就労するために2005年度の就労開始日である2004年10月1日まで待つ必要はないということになります。しかしながら、あなたは新規のH-1bビザを申請する直前のステータスがH-1bではないため、H-1bポータビリティー(移民局が申請を受け付けた時点で転職先などで新しい仕事を始めることができる)の条件を満たしていません。従って、書類の申請後直ちに仕事を開始することはできませんので注意してください。 質問
H-1b、L-1ビザなど移民局はオンラインによるI-129の申請を受け付けると発表しましたが、その利点を教えてください。
答え
移民局はオンラインによるI-129の申請受付を開始しましたが、いずれにしても後から郵送による補足の書類の提出を行わなければならないため、オンラインによる申請のみでは完全に申請が完了するものではありません。オンラインによる申請の最も大きな利点というのは、直ちにI-129の申請を行いたいという時であって、例えばH-1b保持者がH-1bポータビリティー(移民局が申請を受け付けた時点で転職先などで新しい仕事を始めることができる)を使用して、今すぐにでも転職して働きたいという時にこのオンラインによる申請は便利かもしれません。その際、一旦、I-129フォームを提出すると、申請者はすぐにH-1bステータスにて転職先で働くことが可能となります(in the H-1b portability context.)。このことがオンラインによるI-129申請の最大の利点といえるでしょう。 質問
私は、米国で勉強するため、F-1かJ-1ビザを取得したいと考えています。私は申請時点で英語を話すことができなければならないのでしょうか。
答え
もし、あなたが熟達した英語力を必要としないF-1もしくJ-1プログラムに参加するということであれば、米国大使館および領事館の職員は単にあなたが英語を話すことができないという理由で、あなたの申請を却下することはないでしょう。申請が却下される理由の多くは、米国に移民したいという意思がある場合などであり、英語を話す能力というのは、申請を却下する要因とはなりません。
質問
私は、現在米国永住権を保持していますが、今後、米国市民権を取得したいと考えています。米国市民権を取得するためには、その申請前、米国にどのくらいの期間滞在している必要があるのでしょうか。
答え
このことはたいへん複雑な問題です。まず考えなければならないことは、あなたが現在の永住権をどのようにして取得したかによってその期間は大きく変わります。もし、あなたが結婚を通して永住権を取得したということであればその期間は3年ということになります。一方、雇用を通して永住権を取得したということであれば、5年となります。それら期間中は実際に米国に滞在している必要があるのですが、1年のうちに6ヶ月以上米国を離れていてはいけないことになっています。もし米国を離れるということであれば、その時は再度米国に戻り、滞在するつもりであるという意思表示を行う必要があります。また、例えばあなたが雇用ベースの永住権保持者で米国市民権の申請を行うということであれば、その申請前5年のうちに912.5日は米国に滞在している必要があります。更に、米国市民権の取得のためには良識のある人物であることを証明する必要もあります。 質問
私は雇用ベースの永住権取得の最終段階において、労働許可証(EAD;employment authorization document)を申請しました。その労働許可証はどのくらい有効ですか。
答え
現在までは、労働許可証は1年間有効なものが発行されてきました。移民局は最新の情報として、ここ数週間のうちに各センターに対してケースに応じては最高3年間有効となる労働許可証の発行を行うことができる規則を打ち出すと聞いています。これは単に永住権保持者に対するものだけではなく、例えばE-2ビザ保持者の配偶者の労働許可証に対しても適用されます。この新しい規則により、全ての労働許可証が3年間有効になるということではありませんが、移民局は、管轄の移民局の審査時間に応じて、最高3年まで有効な労働許可証の発行を行うことができます。今後、この新しい規制を通して、ほとんどの人は労働許可証を毎年再申請することはなくなるでしょう。 質問
2005年度のH-1bビザ発給限度枠に関して、現在のところ、H-1bはどのくらいの数が発給されましたか?
答え
2004年5月31日現在、2005年度(10/01/2004~09/30/2005)の年間発給枠65,000件のうち、16,100件のH-1bビザが発給されました。移民局は2004年10月1日よりスタートする2005年度のH-1b申請の受付を2004年4月1日より開始しましたが、それ以来、ひと月あたり約8,000件という計算になります(H-1bの申請は就労開始日の6ヶ月前より可能)。仮に月8,000件の発給ということを前提に計算すれば、今年の11月ごろには2005年度のH-1b発給の上限に到達するということが予測されます。この上限の到達時期の予測は現時点ではたいへん困難で、11月頃というのはあくまでも予測にすぎません。申請は今後更に増えることも考えられますので注意が必要です。 質問
ということは、私はH-1b年間上限枠に達する前にプレミアムプロセッシング($1,000の特別料金を支払うことにより、申請から15日以内にビザ申請に対する審査結果や質問状の返答を受けることができる特急審査プログラム)を利用して申請したほうがよいのでしょうか。
答え
最近の移民局の発表によると、H-1bの年間発給数枠内として申請書類が審査されるかどうかは、移民局がH-1bの申請を正式に受付た時点で決まることとなっています。従って、プレミアムプロセッシングは何かしらの返答を直ちに受けることはできますが、たとえプレミアムプロセッシングを使用しない通常の申請を行ったとしても、H-1bの発給数が有効である限り、申請が正式に受け付けられたその時点で、その申請は年間発給枠の対象となるのです。よって、現在の状況を見る限り、緊急の返答を必要としない限り、プレミアムプロセッシングによるH-1bの申請は必要ないでしょう。ただし、今後H-1bの年間上限枠がどのように埋まるか予測がつきにくいので、H-1bの申請は早めに行うことをお勧めいたします。この件に関しましては、移民局は2004年度のH-1b申請の受付を終了して以来今日まで、正式な発表はしていませんでした。
弁護士 デビッド・シンデル
http://www.swlgpc.com/
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