ビザアドバイス
2004/10/04
Vol.69 永住権申請に関するスポンサー会社の給与支払能力
雇用ベースの永住権申請時における最も大切なことの一つに、永住権申請のスポンサーとなる会社による永住権申請者に対する賃金の支払能力の証明が挙げられます。スポンサーとなる会社は、その永住権申請者に対して労働局の規定する平均賃金以上を支払う能力があることを示す必要がありますが、実際多くの会社がこの支払能力の証拠を示すことができていないのが現状です。事実、雇用ベースの永住権申請において、会社は労働証明の申請(labor certification)、もしくは雇用移民ビザ申請(I-140) を行いますが、その際スポンサーとなる会社は十分な粗利益があることを示さなければなりません。ここで言う粗利益とは売り上げなどの収入から支出を差し引いて残った利益分のことです。特に規模の小さな会社などでは税金対策のため、社員に高めに給料を支払ったり、また赤字決算することでなるべく粗利益を出さないようにしているのが現状です。このことは雇用ベースでの永住権申請者本人ならびにそのスポンサー会社にとっては大きな問題と言えます。 最近の移民局の発表においても、雇用ベースの永住権申請において、スポンサーとなる会社は最低でも労働局の定める平均賃金を永住権申請者に対して支払う能力がある証拠を永住権申請時に示さなければならないことが強調されています。申請に必要なI-140に加えて会社がその永住権申請者に対して最低必要な給与額を支払うことができる証拠となる書類として(1)年次会計報告書、(2)確定申告書、(3)監査済みの財務諸表、が挙げられます。スポンサーとなる会社はそれらのうち最低一つのコピーを証拠として提出しなければならないことになっています。
申請者はそれら必要書類を提出することになりますが、以前もお話ししましたように、提出に必要な書類が全て揃っているということであれば、移民局の審査官はスポンサーとなる会社がその永住権申請者に対して最低必要とされる平均賃金を支払うことができるかどうかの判断を提出された書類のみで行います。審査の判断は各審査官の任意裁量によりますので、場合によっては質問状を出すことなくいきなり却下を下すことが可能となっています。そこで、その突然の却下を避けることが申請時にはたいへん重要なこととなりますが、移民局の審査官は次のようなことをもとに会社が最低必要な平均賃金を支払う能力があると判断しています。
(1) スポンサー会社の粗利益が永住権申請者に対して最低支払われるべき平均賃金を上回る場合
(2) スポンサー会社の現金などの正味流動資産が永住権申請者に対して最低支払われるべき平均賃金を上回る場合
(3) 永住権申請者が既に雇われている従業員であれば、申請時の給与支払額が平均賃金以上であることを確実に証明できる書類がある場合(例えば源泉徴収票など)
以上のようなものがスポンサーとなる会社の給料支払い能力を示す最良の証拠となり得ますが、もしそれらの書類で会社の支払能力を示すことができないということであればそのスポンサー会社は支払い能力が無いとみなされ、この時点で永住権申請が突然却下される可能性もあります。ただ、それら必要書類で会社の支払能力を示すことができない場合、損益計算書や銀行口座の記録、自分以外の会社の従業員の源泉徴収票や給与明細なども判断材料として移民局は受け付けることもあります。また、従業員が100人以上の大企業であれば、通常必要とされる年次会計報告書などのコピーの代わりに、その会社の財務責任者からのレターにより申請者への平均賃金の支払能力を示すことができれば、移民局の審査官はそれを正式な証拠として受け付けることもあります。ただし、いずれのケースにおいても、会社の給与支払能力に関する全ての決定はあくまでも各審査官の任意の判断に委ねられていることに変わりはありません。
以上話したように、現在では提出された書類をもとに質問状を出すことなく突然の却下を下すことのできる権限を各移民局のサービスセンターが与えられ、その突然の却下を下すことが正当なプロセスとなってきています。一方、従業員100人以上の大企業とそれ未満の中小企業とでは会社の支払能力を示す証拠の提出方法に大きな差が見られます。このことは中小企業が永住権申請のスポンサー会社として永住権申請者に対して最低必要な平均賃金の支払能力を示す上ではたいへん困難な状況が続き、突然の却下が増える可能性を示唆していると言えるでしょう。従って、繰り返しになりますが、現在、私たちにとって最も注意しなければならないことはきちんとした会社の支払能力を示す証拠と共にI-140を提出するということです。
弁護士 デビッド・シンデル
http://www.swlgpc.com/
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